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糖尿病

合併症を引き起こしやすい
「糖尿病」とは

合併症を引き起こしやすい「糖尿病」とは糖尿病は、血糖値(血中のブドウ糖濃度)が基準より高くなる病気です。
高血糖の状態が長期間続くと全身の血管に障害を与え、動脈硬化が進行し合併症を引き起こすリスクが高まります。そのため糖尿病治療では、合併症を防ぐための血糖値コントロールが中心に行われているのです。
代表的な合併症とその症状としては、糖尿病性神経障害(手足の痺れ・痛み、排尿障害など)、糖尿病網膜症(視力低下、失明など)、糖尿病性腎症(蛋白尿、むくみ、人工透析など)、心筋梗塞(突然胸痛、心停止など)、脳梗塞(手足の麻痺、呂律が回りにくいなど)、足壊疽(足の皮膚が赤く腫れる、足が腐るなど)、歯周病(歯肉の痛み、歯が抜けるなど)が挙げられます。
なお、これらの合併症や症状は、糖尿病を発症した直後に起こるわけではありません。

代表的な合併症

糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害は、手足のしびれや痛みなどの感覚・運動神経障害や排尿障害・便秘・下痢などの自律神経障害の症状が現れます。高血糖状態が長引くと、約5年で症状が出始めます。

足壊疽

糖尿病性神経障害になると、感覚の喪失や血流の悪化、免疫力の低下などで靴による擦れや小さな傷などから足の皮膚に感染が起こり、足壊疽を引き起こします。重症化すると皮膚が溶けて骨が露出し、足を切断しないと救命できない状態にまで陥ります。糖尿病で血糖値が高い状態の方ほど発症リスクが高く、切断のリスクも高まります。年間約3,000人が足の切断に至っています。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、自覚しないうちに視力が低下してしまう合併症です。最悪の場合、失明に至る危険性もあります。実際に視力低下をきっかけに眼科を受診した際、糖尿病が発見されるケースも珍しくありません。これは高血糖によって眼底の血管が障害されることで起こり、血糖値が高い状態が長引いた場合、約7~10年で症状が出始めます。年間約5,000人が失明に至っています。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、尿検査で蛋白が指摘されたり、足や顔がむくんだりする症状が出る合併症です。高血糖によって、腎臓の糸球体が破壊されることで起こります。高血糖値状態が続くと約10~13年で、人工透析が必要になる恐れがあります。年間約3,000人が透析を受けています。

心筋梗塞・狭心症

心筋梗塞や狭心症は、動脈硬化によって冠動脈が詰まり、心臓の筋肉に栄養が届かなくなることで発生する病気です。突然激しい胸の痛みに襲われることが特徴です。この病気を発症して救急車で運ばれる患者さんの多くは、糖尿病、高血圧症、脂質異常症のいずれかを持っています。喫煙も原因の1つです。

脳梗塞

脳梗塞は、動脈硬化によって脳の血管が詰まり、脳細胞が死んでしまう病気です。範囲が広いと手足が動かなくなったり、呂律が回らなくなったりして後遺症が出てしまい、QOLに大きな悪影響を及ぼします。この病気によって救急車に運ばれる患者さんの多くは、糖尿病、高血圧症、脂質異常症のいずれかを持っている傾向があります。

歯周病

糖尿病の方が歯科健診で歯周病を治療すると、HbA1c値が下がり糖尿病が改善することがあります。糖尿病を発症すると歯周病にもなりやすく、歯周病を発症すると糖尿病が悪化しやすい傾向があります。そのため歯科医院で定期的にデンタルケアを受けましょう。

初期は気づきにくい!
糖尿病の症状

多くの糖尿病の患者さんは無症状で、健康診断や他の病気をきっかけに医療機関へ受診した際、偶然発見されるケースが多いです。症状がある場合は、糖尿病がかなり進行している可能性が高いです。

のどが渇く・頻尿

血液中の糖が多くなると、体は血液を薄めようとして喉が渇き、水分を摂るようになります。その結果、トイレが近くなります。頻尿とは、1日に8回以上トイレに行くことを指します。

尿が泡立つ

初診で「尿が泡立つのですが、糖尿病か心配です」と訴えて受診される方がいます。尿が泡立つ原因は、尿の濃度が濃い、尿に糖や蛋白が含まれている、尿に細菌が感染しているなど様々です。尿が泡立つだけで糖尿病とは断定できませんが、糖尿病のサインのひとつとして重要でもあります。

足がしびれる・つる

血流不良や末梢神経の障害によって、足がつりやすくなります。実際に、「砂利道を裸足で歩くような違和感」に悩む患者さんもいます。

倦怠感・体重減少

急激な体重減少は糖尿病の強い疑い症状です。
糖尿病を発症するとインスリンが不足し、食事から摂取したブドウ糖をエネルギーとして十分に消費できなくなります。その結果、体内の脂肪や筋肉を分解してエネルギーを補おうと働くため、食事を摂っても痩せてしまうのです。
急激に痩せた場合は、インスリンがかなり不足している可能性が疑われるので、合併症のリスクを考慮して早めに受診してください。

免疫力の低下

糖尿病を発症すると風邪などをひきやすくなります。高血糖が原因で白血球の機能が低下し、ウイルスを撃退する力が弱まるため、感染症にかかりやすくなるのです。糖尿病を患っている期間が長いほど、がんの罹患率が高いと言われています。
また、糖尿病患者さんは糖尿病のない人に比べて、約1.2倍がんにかかりやすいと言われています。
癌種別では、肝臓がん2.2倍、膵臓がん2.1倍、大腸がん1.3倍と消化器系の発がんリスクが高いことが特徴的です。

糖尿病の種類と原因

2型糖尿病

2型糖尿病日本では95%以上の糖尿病患者が2型糖尿病に該当します。
原因としては、遺伝的要因、加齢(40歳以上で発症しやすい)、早食い、暴飲暴食、高脂肪食の摂取、運動不足、肥満、不規則な食事時間、ストレスなどが挙げられます。これらが引き金となり、インスリンの分泌が低下したり、インスリンがうまく働かなくなったりする(インスリン抵抗性)ことで発症します。
2型糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、糖尿病合併症が進行すると、手足の感覚が低下する、チクチク刺すような痛みがある、頻尿、性機能の問題(ED)、感染症にかかりやすい、傷が治りにくいなどの症状が現れます。

1型糖尿病

主に自己免疫学的機序により、インスリンを作る膵臓のβ細胞が破壊されることでインスリンが分泌されなくなり高血糖状態となる糖尿病です。本来は外的から体を守るために働く免疫が、自身の細胞を標的にしてしまい破壊してしますのです。ウイルス感染が発症に関与しているとの報告があります。
採血検査で抗GAD抗体や抗IA-2抗体が陽性となります。インスリンが分泌できないため原則インスリン治療が必要です。

糖尿病を疑う場合の検査

血液検査

血糖値

血液中の糖の濃度を調べる検査です。食前と食後で値が変わり、空腹時だけでなく食後2時間後の血糖値を測ることで、インスリンが正常に働いているかを調べます。

基準値
  空腹時血糖 食後2時間血糖
正常 100mg/dl未満 140mg/dl未満
正常高値血糖 100-109mg/dl -
境界型 110-125mg/dl 140-199mg/dl
糖尿病型 126mg/dl以上 200mg/dl以上
HbA1c

HbA1cは、過去1~2か月の血糖状態を調べることができる検査です。健康診断前だけ生活習慣を見直しても、HbA1cの値は変わりません。また、インスリンの分泌状況を確認するための血液検査もあります。これには血中インスリンやC-ペプチドの測定が含まれ、インスリンが効きづらいのか、もしくは分泌されていないのかを把握することができます。

基準値
  測定値
正常 5.6%未満
正常高値 5.6~5.9%
境界型 6.0~6.4%
糖尿病型 6.5%以上

尿検査

尿中微量アルブミン

尿中アルブミン検査は、糖尿病の合併症である腎機能障害を早く見つけ出すための重要な検査です。尿中アルブミンが検出されると、将来的に人工透析が必要になるリスクが高まるため、一度は受けておくべき検査です。

基準値
  測定値
正常アルブミン尿(腎症前期) 30mg/gCr未満
微量アルブミン尿(早期腎症期) 30~299mg/gCr
顕性アルブミン尿(顕性腎症期) 300mg/gCr以上

糖尿病の治療方法

糖尿病治療の基本は、食事療法、運動療法、薬物療法の3つです。各治療法の目的や具体的な方法については次の項目で解説しますので、ぜひ参考にしてください。

治療の3本柱

食事療法

糖尿病治療の食事療法では、糖の摂取量やエネルギーバランスを調整して血糖値を正常に保ちます。
朝・昼・晩と規則正しく食べ、炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミンをバランスよく摂取してください。さらに、ゆっくりよく噛んで食べることが基本です。「腹八分目」「夜遅くや寝る前に食べない」ことにも気を付けましょう。
栄養バランスについては、日本糖尿病学会の「食品交換表」を参考にすると良いでしょう。
血糖値の急激な上昇を防ぐため、「野菜→おかず→ご飯(炭水化物)」の順で食べましょう。食べる時間帯が不規則な場合は、それも改善しましょう。また。高血圧予防のためにも、塩分は1日6g未満を目安に減らすのが望ましいです。
間食される場合には血糖値の変動の少ないものを選ぶことが大切です。糖質が少なく、タンパク質が豊富なナッツ、小魚、卵、豆類、焼き鳥(たれより塩)などがお勧めです。

運動療法

運動療法運動療法には、体内の糖を消費し、筋肉量を増やして糖代謝やインスリンの働きを高める効果があります。
まずは、有酸素運動とレジスタンス運動が推奨されます。有酸素運動にはウォーキング、ジョギング、水泳などがあり、全身の筋肉を使います。レジスタンス運動は筋力トレーニングで、腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどが挙げられます。
有酸素運動は週に150分以上、週に3回以上を目安に行います。中等度で「ややきついかな?」と感じる程度の負荷をかけ、運動1回につき20分以上続けることが推奨されています。
レジスタンス運動:は週2~3回、連続しない日程で行います。高齢者や持病のある方は医師の指導を受けながら行い、強い負荷の運動は避けてください。
運動のタイミングは自由ですが、食後1時間以内に行うと食後の血糖値の上昇が抑えられやすくなります。

薬物療法

物療法血糖値を下げるために様々な薬が使われます。薬には「飲み薬」と「注射」の2種類があり、飲み薬はさらに9種類、注射は2種類あります。

飲み薬

現在、糖尿病の飲み薬は9種類あり、その作用から大きく分けて3つに分類することができます。

インスリンを効きやすくする薬(インスリン抵抗性改善薬)
  • ビグアナイド薬(メトホルミン)
  • チアゾリン薬
インスリンを出しやすくする薬(インスリン分泌促進薬)
  • スルホニル尿素(SU)薬
  • DPP-4阻害薬
  • 速効性インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
  • GLP-1受容体作動薬
  • イメグリミン
糖の吸収や排泄を調整する薬
  • α-グルコシダーゼ阻害薬
  • SGLT2阻害薬
注射薬
  • インスリンを分泌しやすくする薬(GLP-1受容体作動薬)
  • インスリン自体を補充する薬(インスリン製剤)

1型糖尿病の場合は、インスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊されているため、インスリン注射が必須です。
一方、2型糖尿病の治療の基本は「食事療法」と「運動療法」です。生活習慣の改善に加えて「薬物療法」を併用します。
内服薬だけで血糖コントロールが不十分な場合にはインスリン注射が必要になることもあります。適切な食事療法と運動療法を行うことで、インスリンの効きやすい体質を目指します。これができずにいると、肥満や脂質異常、高血圧のリスクが高まります。

通院の頻度

どの治療でも定期的な通院が必要です。糖尿病患者さんの通院頻度は一般的に1~2か月に1回程度です。
ただし、病気の状態や治療内容によって異なるため、医師に相談しながら決定しましょう。